白金台の家

写真をご覧になると少し中国風な感じをうけられると思いますが、このお住まいは、中国での長い特派員生活の経験をもつジャーナリストが主として執筆等の仕事をするスペースとして購入されたマンションをリノベーションしたものです。
クライアントの蔵書の量が多く、その保管のために自宅以外の場所をかりていたほどで、その蔵書をこのあたらしい書斎住居にまとめたいという要望がありました。
 
  中央の写真は、クライアント所有の清朝時代のエレガントな椅子とテーブルを中央にすえて、中国の庶民がふだん愛飲しているお茶を読書でもしながら、あるいは来客ともども、静かに味わいたい… そうしたクライアントの要望にこたえて空間化したもので、中国のかおりをただよわせた〈 本に囲まれた茶室 〉です。 カーブした棚は、「中国の陶磁器の形体の丸いやわらかなイメージ」とそれとなく呼応させたもので、写真ではまだそのようになってはいませんが、この棚の下に、本を床から平積みしてもらうようにしました。 部屋の左手の壁の向こう側は廊下になっていますが、その境に、細いストライプ模様をブラストしたガラスで両面をカバーした中国の透かし彫りをはめこみました(→中段左および右の写真)。  額がかかっている正面の赤布貼りのニッチは、故宮にみられるような中国の歴史的カラーとの呼応と、この〈 本の茶室 〉が、住まい全体の〈 へそ 〉として存在していることをイメージ的に響かせています。
 
下段左と中央の写真は、この住戸の北側の和室で、障子は和紙をつかわずに光を拡散する人工紙を用い、外光をできるだけとりこむように工夫しました。 同時に、和紙を貼った板戸を組み込み、それを閉めることで昼間でも暗室化することが可能になっています。 写真は、板戸の開閉で室内の表情がかわるようすを示しています。
 
〈 今の感覚 〉と〈 中国のかおり 〉をほどよく両立させるデザインを、クライアントの趣味嗜好性にマッチさせるようにやわらかにまとめてみました。

改修前