OKASAN ASIA CENTER

虎ノ門の外堀通りと愛宕通りの交差点に面して建つこのビルは、リノベーションの事例です。 既存のビルは屋上に巨大な広告塔がのり、いわば看板建築の様相を呈していました。 ビルは証券会社の支店として使われていたのですが、手狭になって支店機能が移転したために、そのあとを人が集まる〈 ショールーム + VIPサロン 〉に生まれかわらせたいという同社の方針にしたがって、既存の状態からは想像できないような再生デザインを提案し、実現したものです。
 
まず外観については、既存のビルをアルミルーバーで覆い、既存の広告塔部分も同じ素材でカバーすることで、全体をひとつの建築として見えるようにしました。 このビルの敷地の一部は道路拡幅の都市計画にかかっており、そのエリア内は建築物の高さが10mまでという制限を受けます。 外観の斜めになった部分が都市計画エリア内で、この斜めの部分はルーバーのみで構成されていますので高さ制限をうけずにすんでいます。
虎ノ門の街並みのランドマークになるような位置にあるこのビルは、都市景観の向上に積極的に寄与するものであるべきです。 この建物自体の機能にふさわしい外観デザインを工夫することは当然のことですが、都市景観との関係についても総合的にいろいろ工夫しています。
 
まず、外観のダイナミックなシェイプは、〈 クライアント会社の勢い 〉をアピールしていますが、〈 株価のダイナミズム 〉というイメージとも共鳴させています。 たまたま両側の隣接ビルが茶系タイルのシックな外観をしているということで、外装ルーバーのホワイト色を微妙に黄帯させてなじませています。 またルーバーの前面側の角をまるく面取りして、歩行者の眼線にやさしい視覚的触感をあたえています。  また、夜間のライトアップは、あえて均質的なものを避けて、周囲の夜景の雑多な光に呼応するようなかたちにしました。
 
内部は、1階が、大型ディスプレーによるアジア地域のリアルタイムの株価表示、アジア各国の文化に関するものをふくめた種々な情報提供、各種セミナーの開催等——いわばショールーム機能、2階がVIPサロン、3階以上は事務スペースになっています。
 
2階のサロンは、台湾産高級茶を出しての接客が可能な専用コーナーも設けられた〈 別世界インテリア 〉で、2000枚のコーヒーフィルターを用いた壁面構成という世界に類例のない〈 アートウォール 〉が組みこまれています。 ここはまさに「都市の中にいることをわすれさせてくれる〈 静寂の空間 〉」といえると思います。
 
*岡三証券 アジア情報館 OKASAN ASIA CENTER 港区虎ノ門1-4-7
 都市再開発の関係で、同館は 2016年4月末 に閉館されました。

アルミルーバー取付