ゆらぎ Something Unlimited

目新しいものをつくろうと個性でがんばった空間はとかく、居心地が悪くなりがちである。
毎日、長時間そこにいることになる住まいの空間であれば、やはり、「リラックスできる居心地のよい空間」であることがなによりも大切であろう。人生のベースになる住まいは心をつくして計画したいものだが、そうかといってあたかもオブジェの中に住まわされているような住まいは考えものである。
 
これ見よがしではない〈 自然な感じ 〉であるけれど、単に自然な様態というのでもなく——そうかといってシンプル化が〈 平板 〉に帰結してしまったようなものでもなく、〈 ゆらぎ 〉のなかにつかめない性質を示すもの——あるいは多様な要素の混成でありながら、部分が突出することなく全体の調和をなしているもの——そして硬くて冷たい印象のものではなくて、ある種のルーズさとあたたかみを漂わせているもの——そんな特性を具備しつつ、「それ独自のいわくいいがたい魅力を伝えてくるもの」に、めったにはないのだが出会うことがある。
 
そういうクオリティは、建築、タウンスケープ、アート、あるいは自然の風景などに共通していえる〈 なかなか生成しない性質 〉である。
 
写真は、実際の空間体験における視点の移動とか太陽光線の変化などのよき可能性をすてて、一時点における視野のフレーミングという〈 限定化 〉を通して、独自の世界生成の可能性を追求できるカメラというメカにサポートされたアートであるが、それは、どこかに生成している〈 よきもの 〉にたまたま出合ったときの感動を昇化してくれるという魅力をもっている。
 
スタティックな表現体である写真は一般には飽きがきやすいが、しかし魅力が持続するような写真も存在する。 自分にとってほんものの魅力とはどこからやってくるものなのか? よきものに出会っておもわずシャッターを切ったその写真をながめては、その不思議に想いをめぐらせる。
 
 

*ここに掲載した写真を主体に、折にふれてぱらっとページをめくれるような小型のノンジャンル写真集を刊行したく思っています。出版実現に協力していただける方からのご連絡をお待ちしています。