生き物オブジェ | 多肉植物と白磁鉢のデザイン
いかにもみずみずしい多肉植物に出会ったのが
そもそもの ことのはじまりである …
最近は まちでよく多肉植物をみかけるが
しかし 「これは」 というものには なかなか出会わない …
それが 昨年の春(2014)のこと
隅田川を見晴らす木造家屋の二階の物干し台に
多肉植物が展示されているのにでくわし
その多肉植物たちがいずれも 〈命の光〉 を発しているかのように
いかにもみずみずしい姿をしているのにすぐに気づいた …
そして 房状の多肉葉を赤く染めている株立ちの一鉢 (乙女心) に
目がとまった …
色合いの美しさとリズミカルな全体の姿とが
なんともいえずいい感じで すっかりほれこんでしまった …
で その場で ふとイメージがわいたのである …
この多肉植物のために円筒形のシンプルな白鉢を用意して
自分のアトリエにオブジェのようなかたちで飾ってみたら …
その元気な多肉植物を育てているのは 高橋なつみさん という人
であった。
とりあえず気にいった 〈乙女心〉 の一株を取っておいていただくよう
高橋さんにつたえ その一株をいちおう想定しながら鉢の図面を描いた。
その図面にもとづいて 平松祐子さん という白磁の作家に
実際の鉢を作っていただくことになった (*)
氏の生みだすシンプルな三次元曲面はとても美しく
その感覚に信頼をおいての 筆者にとっては
とてもぜいたくなコラボになった。
多肉植物という生命体の有機的なフォルムと
そのフォルムを映えさせる 「それ自体はデザインを強く主張しない
シンプルな幾何学的形態」 の組み合わせ――
そこでは とくに鉢自体のプロポーションを重視しており
その自立したプロポーションに対して、多肉植物のサイズの大小や
多様な形姿に応じて、それなりに、植物と鉢とが一体となって
独自のバランス美を生成してくれる。
また、平松さんに作っていただいた鉢の厚みはきわめて薄く
多肉植物をななめ上方からみたときの 「鉢のエッジの丸いライン」 が
きりっとかろやかで 美しい!
結局 四つの白磁鉢に、筆者が希望した品種を高橋さんが植えこんで
くれて今年の梅雨入りのころにそれを届けてくれた。
そのときはじめて目にした 鉢上に展開する多肉植物それぞれの姿に
格別の感動をおぼえたのをわすれることができない …
ここに掲載した写真は その中の 〈福娘〉 という品種である。
写真:筆者撮影
*佐藤省さん(ギャラリー悠玄)に間を橋渡ししていただいた。
ここに記して感謝の気持ちを表します。
2015年8月23日