美 ○ 創造
まちで見かける 手書きや手作りの個性的なメニュー看板 …
きちっと作られた固定看板が、
周囲の環境のあり方との対照関係で大なり小なり視認され、
通常の雑然とした環境の中にあって、
「看板全体としての整序の力」 をデザインに生かそうとする
のに対して、
日々、掲出内容を更新できる店頭の手作り看板の方は、
見る側の眼を 部分部分の情報に向かわせる注視性を有し、
したがって、看板全体の整序美というよりも、
「親しみを感じさせる おもしろさ」 というところで、
ユニークな表現が生まれる自由さがある。
「テンポラリーな性格のもの」 の中に現われる
多様な個性のゆたかさ …
写真は、前回の文章で紹介したカフェギャラリーのメニュー看板。
埼玉県東松山市に RINZ/Bakery Cafe あ~との国
( Rinz Gallery+ を併設 ) が、今年2月にオープンした。
看板は、そこでアートディレクターを務めている金子清美さんの
手作り即興だ。
ふかふかしたパンのイメージが生かされたデザインで、
それとなく人目を惹いて、グッド …
既存の小椅子を利用して、その上にピンナップボードをのせ、
そうした制約の中で、臨機応変にボード面の構成を考える …
そこに、キッチリ決められたものには欠落しがちな
〈テンポラリーの軽やかさ〉 のようなものが漂う …
写真:金子撮影
*あ~との国は 2014年2月にRINZビルから移転しました。
2013年8月27日
美 ○ 創造
写真は、あるカフェギャラリーのために手作りされたフロアランプで、
大型のガラス瓶の中にLED光源を仕込み、外側を特殊な紙で
くるんだだけの単純な構成ではあるが、紙のくるみ方がユニークで、
市販品にはない複雑微妙な陰影が とても柔らかで、美しい!
見る角度を変えると、微妙な表情が、大胆に、変化してゆく…
制作したのは、私のアトリエのパートナーであり、現代美術作家でも
ある金子清美さん。
売ることを目的にした量産品は、それが優れたデザインのもの
であっても、量産に適した素材の選定とか 組み立て方式とか、
最終的にはコストという条件に制約された中での可能性である。
一方、そのモノが置かれる場所の具体的な条件を読み込んで
より自由に発想すれば、現代的な魅力をもったデザインの
可能性が、思わぬかたちで姿をあらわすかもしれない…
本ホームページ Furniture のところに掲載してある
片手で軽々と持ちあげることのできる スツール moonwalk は
それが使用される住宅の住まい手が、スツールを丁寧に扱って
くれることがわかっていたので、そういうデザインが実現した
のだった。
販売された後、どういう場所に置かれ、どういう使われ方を
されるのか ―― そこに一定の幅を見込まなければならない
のが量産品であり、その場合は、当然に、強度的な面で
安全側のデザインがなされ、結果、とかくドテッとした姿の
ものになりがちである。
手づくりしたものの場合、やけに作り手の個性が強くでたり、
あるいは、どこかで見たようなコピー的なものになったり、
真に優れたデザインは めったに生まれないのも事実。
でも、そうだからといって、ハイスペックで無難な量産品に
選好意識が安易に短絡してしまうのは さびしいと思う。
写真:筆者撮影
2013年8月25日
美 ○ 創造
前回のブログで書いた佐藤省さんの展覧会は、
来廊者それぞれの眼に 独特の印象を刻印したようだった。
展覧会の会場は、住宅地の中の一軒家を改造したもので、
昔の木造車庫が 小屋組みの見えるギャラリー空間に改修され、
隣接する和室空間には 床の間があり、
縁側越しには 緑豊かな中庭が望める ――
そういう、いわば 〈気取りのない空間〉 なので、
観者は、空間に馴染んだ状態で 作品にゆっくりと
接することができたのではないかと思われる。
展覧会の実際の空気と その中での作品の印象は、
断片的な写真を並べてみても、伝えることはできない。
住宅部分を含む展示空間の全体は、ホワイトキューブとは違って、
さまざまな性格をもつ部分空間の集合体であるが、
それぞれの部分空間にふさわしい作品が厳選され配置されるとき、
実際の空間では、観者の 「相互に性格を異にする空間から空間への
《移動》」 が、展示作品とまわりの空間がセットになった感覚体験の
〈相互異質性〉 を 違和感なく内面に共存させてしまう役割をはたして
いることに気づく。
そういう 「空間性と共にある プロセス的な作品対話」 というものは、
「断片としての写真の並置」 から受ける印象とはかけ離れたもの
であることを踏まえつつも、あえて 筆者が撮影した写真を以下に
掲載してみたいと思う。
(→ 写真をクリックすると拡大写真が見れます)
ギャラリー空間
〈刻を落下する花の発光〉
左側の写真の額は、生命的自然との日常の対話からうまれる
作家の感興を トレーシングペーパーの向こう側に昇化させた
肩ひじはらぬ微音的世界を、白壁にそっと凹部をつくって
さりげなく飾れたら… というイメージで 筆者がデザインしたもの。
額の 「額然とした様相」 を限りなく消して、簡素化してみた。
〈光を通過する風のゆらぎ〉 〈風の成す形〉
和室の奥の屏風の前の暗がりの中に、一点、静寂の灯りが
ともされ、その上に、透光性の作品が置かれた。
ここは、展覧会場の一番奥の位置にあたるので、いろいろ作品に
接したその最後に、観者は この美しい透光の世界に 沈潜する…
この透光作品をみて、作家が表現したい世界がすっと
つかめた ―― と感想を話していたアーティストもいた。
なお、ライトボックスは、筆者が 10年程前に AZAMINO house
のためにデザインしたムーバブルワゴンを転用したもの。
→ 本ホームページ Furniture のところに掲載
〈海〉
写真:筆者撮影
2013年8月4日