異形の庭 | 佐藤省 個展
前回のブログで書いた佐藤省さんの展覧会は、
来廊者それぞれの眼に 独特の印象を刻印したようだった。
展覧会の会場は、住宅地の中の一軒家を改造したもので、
昔の木造車庫が 小屋組みの見えるギャラリー空間に改修され、
隣接する和室空間には 床の間があり、
縁側越しには 緑豊かな中庭が望める ――
そういう、いわば 〈気取りのない空間〉 なので、
観者は、空間に馴染んだ状態で 作品にゆっくりと
接することができたのではないかと思われる。
展覧会の実際の空気と その中での作品の印象は、
断片的な写真を並べてみても、伝えることはできない。
住宅部分を含む展示空間の全体は、ホワイトキューブとは違って、
さまざまな性格をもつ部分空間の集合体であるが、
それぞれの部分空間にふさわしい作品が厳選され配置されるとき、
実際の空間では、観者の 「相互に性格を異にする空間から空間への
《移動》」 が、展示作品とまわりの空間がセットになった感覚体験の
〈相互異質性〉 を 違和感なく内面に共存させてしまう役割をはたして
いることに気づく。
そういう 「空間性と共にある プロセス的な作品対話」 というものは、
「断片としての写真の並置」 から受ける印象とはかけ離れたもの
であることを踏まえつつも、あえて 筆者が撮影した写真を以下に
掲載してみたいと思う。
(→ 写真をクリックすると拡大写真が見れます)
ギャラリー空間
〈刻を落下する花の発光〉
左側の写真の額は、生命的自然との日常の対話からうまれる
作家の感興を トレーシングペーパーの向こう側に昇化させた
肩ひじはらぬ微音的世界を、白壁にそっと凹部をつくって
さりげなく飾れたら… というイメージで 筆者がデザインしたもの。
額の 「額然とした様相」 を限りなく消して、簡素化してみた。
〈光を通過する風のゆらぎ〉 〈風の成す形〉
和室の奥の屏風の前の暗がりの中に、一点、静寂の灯りが
ともされ、その上に、透光性の作品が置かれた。
ここは、展覧会場の一番奥の位置にあたるので、いろいろ作品に
接したその最後に、観者は この美しい透光の世界に 沈潜する…
この透光作品をみて、作家が表現したい世界がすっと
つかめた ―― と感想を話していたアーティストもいた。
なお、ライトボックスは、筆者が 10年程前に AZAMINO house
のためにデザインしたムーバブルワゴンを転用したもの。
→ 本ホームページ Furniture のところに掲載
〈海〉
写真:筆者撮影
2013年8月4日