〈 透 白 の 立 体 〉 ──── 乳白平面の光映 と シンプルな造形               _                        畑 龍徳 作品

美 ○ 創造 美 ○ 思索

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まったく見たことがないような「形(かたち)」を創り

たい!

── 自然界に存在するものをはじめ、人間が長い歴史

過程で生みだしてきたさまざまな形とは異なる「3次元

の形」を求めて、真剣な遊びの探索を続け、その成果を

一年に一回開催されてきた「おしゃべりなアート展 /

Message Art展」で発表してきた。

 

そのような立体を生みだすには、「作品に用いる素材」

こそが基本的に重要だ。

作品の保存性を前提に素材を選定することはせずに、

とにかく「未見の形」出会うことを目標にして、

柔軟な頭で素材を考えるのだが、不思議なことに、

この素材で創ってみたい!─── そういう気持ちに

させてくれる素材に、いつも偶然にめぐりあう…

 

平面性の紙とか 細い針金などを用いて、単なる表層的な

というのではなく、自分の内面世界および外界の全体

を包括しているであろう まさに「宇宙的なさまざまな

脈絡」を感覚し、思索して、「今このときの筋」のよう

なものをつかみ、直観を働かせながら、ゆらぎの創作

世界を進んでゆく…

 

私は「物質的な形体」と同時に、つねに「空間性」を

見つめている人間であるが、今回の作品は、透光性の

極薄の平面素材によって、サイズと稜長比にそれぞれ

個性をもたせた「空間内包型の直方体と立方体」

複数個作り、それらの高さおよびボリュームにおける

相互関係に、ゆるやかな螺旋状の視覚的ムーヴメント

を与えて、円形領域の中に配置した。

 

今回の作品に用いた素材はポリエステルの合成紙で、

厚味が0.19mmという透光性の平面状のものである。 

小型カッターによって容易に加工できるのだが、

その反面、立体に組み上げる際の「相互接着」に慎重さ

が要求された。 

接着剤を立体の内側に塗るとしても、透光性の素材なの

で、接着跡が透けて見えてしまうのである。

作品の完成形において、面の接合部ができるだけ目立たな

ように立体の面の展開図を工夫するのだが、どこかで

面を相互接着することになってしまうので、いずれにして

も、その部分の接着を丁寧にやらなければならない。

平面を直角に接合させる部分の内側に、透明度の高い

接着剤を塗布するのだが、そのときに直角の入り隅側に、

接着剤が横に広がらないように丁寧に塗布する必要が

ある。

 

こうして立体化されたものを眺めてみると、立体の中に

入った光が、外皮を通して滲みだしているかのような

柔和な表情を見せてくれて、その表情のグラデーション

は、実に豊かだ!

 

そういう透白素材の独特の表情を生かしながら、

展示会場の大きさの中で映える形ということも考え、

自ずと導かれたイメージが、今回の作品の形になった

ということである。

 

 

本作品は、今年(2025年)11月に開催された 第18

Message Art Exhibition 出品された。

(神楽坂セッションハウス・2F Garden

 

同展には60人の創作家が参加して、それこそ多様な

美の空間を生み出していたが、私の今回の作品に関して

は、「作品について話しを聞きたい」というリクエストを

想像以上に多くの方々からいただいて、作品を介した対話

を愉しめた、まさに特別の展覧会であった。

 

 

来廊された多くの方々からいろいろとありがたい言葉を

いただいたのだが、本展の企画者である 佐藤省氏(アート

ディレクターアーティスト)から特別に寄せられた作品

評が、それ自体 創造力に富んでいて、大きな世界への想像

を愉しませてくれるものがあったので、ここに引用させて

いただいた。

 

 

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光に紡がれた静寂から立ち上がっている「透白の立体」は

存在の際 (きわ)で、空間そのものに浸透している。

長方体、正方体は見えているのに、言葉から遠く、

淡く輪郭を震わせ、ひたすら孤独に耐えている。

 

乳白の光に沈澱した闇の骨格に、沈黙は惜しみなく充塡

され、虚空の海を揺らぎ 彷徨する「透白の立体」……

無限へ果てしなく 風の色  探がしながら……

 

物質的な存在に踏み入ると、

社会 個人、国 民族という、本来ならばその限られた

地平で融合している存在でもあるのだけれど、

個々に孤立し 、閉じた存在の景 ─── とも取れる。

素材の物質感が醸し出す陰影が、今の世界情勢を暗示させ

ながら、その美しさ故に、人を詩的世界へ誘惑飛躍させる

力を秘めている……

と「透白の立体」を眺める。

 

見えているのに 見えない…

というのは、形が限定されない ということかと。

それ故に 作品世界へ、自由に 広く踏み入り、

自身のイマジネーションを存分に遊ばせてくれる

魅力を秘めている。

 

あのイメージから紡がれる言葉は際限が無く、

削ぎ落とした根源を問う形は、無駄が無く、

それが逆噴射して……

こちらへイメージを突きつけてくる。

そのゲーム性のような面白さに はまるのは、

他に無い深い味わいによるのだ。

 

作品をどう見るか!─── は、作家の思索思念を離れ、

受け取る者に、「イメージの旅」をさせてくれて

そんな《内面の幸せな出会い》を提供してくれる……

 

 

 

 

 

 

掲載写真:

白面の「光の透過と反射が織りなす色調の妙」

写真では 再現不能であるが、画像処理によって

作品全体の雰囲気に近づけたものを掲載した

 

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