格好をつけた 〈 整 〉 と 平凡な 〈 不整 〉 | 畑龍徳作品 Sharp Figuration / Crushing
99%の繊細さと
1%の大胆さにより
均衡を保っている宇宙
「 いまここ 」
を生きる実感から導かれた
最小限で最大限の要素
清潔な布で
磨きあげられ浄められた
たったひとつの細胞空間
または浄化装置
そしてそれは
光と風を導き
やわらかく繋がるための
ひらかれた心の宇宙 …
評 : 甲斐瞳 artist
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格好をつけた 〈 整 〉 と 平凡な 〈 不整 〉
Sharp Figuration / Crushing
というタイトルの小品を Message2014 という
毎年年末に開かれる展覧会 に今年も出品した。
作品構成に参加させる要素を縮減、シンプル化させた世界で
形態と空間の相互作用のバランス点を 〈 鋭敏化 〉 して
自己の 〈 内面宇宙 〉 にひそむ 「 美意識の性状 」 を
あぶり出してゆく …
逆にいえば 表現体の 〈 複雑性の妙 〉 や 〈 パッと見強度 〉 に
無意識的に 依存してしまうことを あえて避ける …
つまり 〈 美の法則 〉 の中にいながらも
「 美への 〈 可能性の豊穣 〉 」 に あえて浸からない
―― そういうプロセスによる 「 内面世界のあぶり出し 」 …
こういう趣旨で ―― 素材は すべて 〈 純白の紙 〉 を使用 ――
〈 不整 〉 の部分要素は 特殊な白色紙を折り紙程度の大きさに切り
「 意図を働かせず 」 に手でクラッシュし その一個目と二個目を
あえて使用して 〈 選別 〉 のプロセスを介在させていない。
ただし クラッシュしたときの球状のサイズだけは
〈 整 〉 の部分要素である 〈 カベとのバランス 〉 がとれるように
大雑把ではあるが 配慮した。
クラッシュした紙の 〈 襞の部分 〉 に なぜか ほのかに
クリーム色のグラデーションが現われたのを発見したとき …
これだ! と思った。 まさに 向こうからのプレゼント …
人の 〈 内面宇宙 〉 …
それは 人それぞれの人生経験をへて
はかり知れない複雑さと
不確定性を内包する 〈 脈絡 〉 を
形成しているはずだ。
その無意識世界は
直接的には とらえることができない …
でも 作品を制作するプロセスの各局面局面で
意識的に ある判断を 「 直観的に 」 するときに
それはイコール
〈 内的脈絡 〉 の いつわらざるアクションである。
そうして結果した作品は 〈 不整 〉 を含めて美的である ――
という世界内にとどまりつつ、つまり 〈 美的 〉 という 〈 整 〉 に
包含されつつ
部分要素としての 〈 不整 〉 が、部分要素としての 〈 整 〉 との
対比の中で、平凡どころか かえって特色を主張しだした …
〈 不整 〉 がもつところの 〈 ゆらぎ 〉 …
自己の 「 内面世界のあぶり出し 」 という
自己中心の制作過程は
当然 他者の眼は 無関係であるが
100人以上の作家が参加する企画展へ出品する
という動機を自己に課して 制作をし
そして 自分自身が納得すれば
「 結果として 」 作品を展覧会に出す ――
そうして 作品が衆目にさらされる …
来廊者の作品に対する印象などが ことばとして
ぼくの耳にとどくことは 通常きわめて限られているのだが
とくに今回は 前にのべた作品の性質上
他者の反応は 期待していなかった。
しかし 作品搬入のときに イラストレーターの小渕ももさんが
まだセッティングされる前の横っちょに置かれていたこの作品に
気づき シンプルな作品性に 真っ先に反応してくれた …
ぼくは 作品を構成してゆくときに
作品サイズがどんなに小さくても 物質を配置するごとに生成変化
してゆく 〈 空間性 〉 を見つめている。
だから 小渕さんの反応は 氏の眼が空間的であることを暗示して
いるのではないか … とぼくに想像させるところがあった。
ぼくの作品をみに 知りあいがわざわざ会場に足を運んでくれる
ということは ほんとうにありがたいことだと思っている。
そして 作品をめぐって来廊者と直接話をする機会があったり
感想メールがとどいたりすれば 自分は いわば作品を介した
〈 スペシャルな会話 〉 を楽しませてもらっていることになる …
一人歩きをはじめた自分の作品が 鏡のようになって こんどは
ふつうの会話では 「 決して出現することはない角度 」 から
他者を 眺めさせてもらっている …
「 白い小さな空間の中に、〈 不整な形 〉 の存在感の大きさに
驚いた。 光と影、白の持つ特性、相対するもの、が新鮮で
まるで宇宙を見るかのよう …
洗練された 何気ない シンプルな美しさ … 」
(岩崎恵美 singer)
「 光の差し込むシャープな影が キリコのよう …
薔薇の花のような 丸いクシャクシャしたオブジェが
大きなアジサイのようにも見え 色を様々に 想像できる … 」
(杉田茂樹 editor)
「 〈 要素の関係性 〉 の 苦悩など寄せつけぬ 強い存在感 …
風の通る道筋を思い … 光があやなす影の深さと匂い
に寄りそわれた 〈 空間を切る境界 〉 への認識 …
思わず じっと佇ませてくれる …
小さいがゆえの 凝縮された宇宙 …
光讃え 知的な陰影を放つオブジェ … 」
(佐藤省 artist/poet/art director)
写真:筆者撮影
2014年12月7日